格安スマホでも多くの機種に搭載されるようになった生体認証。スマートフォンでロックを解除するための便利な方法です。メジャーな2つの方式「指紋認証」と「顔認証」の仕組みとそれぞれのメリット・デメリットを紹介します。
目次
指紋認証は画面に埋め込む新方式が登場
指紋認証は、指で触ってロックを解除する認証方法です。指紋とは指の表面にある凸凹の形状のことで、人によって違うため、スマホの所有者本人が操作しているのかの判別に使えます。
iPhoneでは、iPhone 8以前のモデルと第2世代iPhone SEが「Touch ID」と呼ばれる指紋認証システムを搭載しています。Xperiaスマートフォンの多くは、電源ボタンが指紋認証機能を備えています。また、モトローラの一部機種のように、指紋センサーだけを独立して配置するスマホもあります。
▲第2世代iPhone SEのTouch ID
Touch IDの場合はホームボタンが指紋認証センサーを兼ねています。指紋を読み取るメカニズムはいくつかの種類がありますが、微弱な電流の反応から指紋の形状を再現する「静電容量方式」が多く使われています。
画面内指紋センサー
最近では、「画面内指紋センサー」を搭載するスマホも登場しました。その名の通り、画面の下に指紋認証の仕組みを設けて、画面を触るだけでロックを解除できます。
▲シャオミ Mi 10 Lite 5Gの画面内指紋センサー
画面内指紋センサーには「光学式」と「超音波式」という2つの方式があります。前者はOPPO Reno3 Aなど、比較的安価なスマホで多く採用されている方式で、光の反射で指紋の形状を判断します。ロック解除のスピードは0.5秒~1秒程度とやや遅めです。
超音波式は、より高速にロック解除できる仕組みで、超音波の反響で指紋を認識します。Galaxy S20のようなハイエンドスマホの一部が取り入れています。
顔認証は2つの方式があります
顔認証は、大きくわけて2つの仕組みがあります。よりポピュラーなのは、カメラによって顔を判別する仕組みです。
前者のカメラを使った顔認証の仕組みは、インカメラさえ搭載していれば導入できる簡便な仕組みです。Androidでは「Smart Lock」というOS標準の顔認証システムが用意されており、多くのスマホが搭載しています。
▲iPhone 11 Proの「Face ID」
一方で、高価なスマホでは、精度を確保するために特別な仕組みを備えているものもあります。
iPhoneのFace IDもその一例で、ドットプロジェクターという部品を搭載し、約3万本もの赤外線ビームを顔にあてることで、顔の立体的な形状を認識しています。
類似の仕組みはOPPO Find Xなど一部のAndroidスマホも取り入れています。
指紋認証と顔認証 メリット比較
ここからは、指紋認証と顔認証、それぞれの機能のメリット・デメリットを紹介します。どちらの機能にも一長一短があります。自分の生活スタイルにあわせて使い分けるのがよいでしょう。それぞれの仕組みの長所と短所を把握すれば、スマホを選ぶ際にも判断の材料にできます。
また、前提として、「生体認証をかければ、スマホのデータを確実に守れる」という保証はありません。生体認証はロック解除をスムーズに行うための仕組みです。
認証の正確さは機種や方式によってばらつきはありますが、これさえかければ安全にスマホを使えるという仕組みではありません。
第三者にとって分かりやすいパスワードを使わない、怪しいサイトは利用しないといったスマホを安全に使うための用心は怠らないようにしましょう。
指紋認証のメリット・デメリット
指紋認証のメリット①:安価なスマホでも比較的正確で高速
指紋認証の仕組みは古くからあり、技術としてこなれています。特に静電容量方式は認証の精度とスピードのバランスが良く、安価なスマホでも使いやすい仕組みと言えます。
▲モトローラのMoto G8 Plusは背面の「M」のロゴが指紋センサーです
画面内指紋センサーは2018年頃から徐々に実用化されている技術で、ロック解除の速度にはばらつきがあります。画面の下にセンサーを置けるため、大画面の迫力のあるスマホを設計しやすいという特徴があります。
安価なスマホで多く採用されている光学式は静電容量方式よりロック解除の速度が遅めですが、世代を重ねるなかで改善されつつあります。
指紋認証のメリット②:マスク装着時も利用できる
今年2020年には、感染症の流行が世界の関心事となり、新しい生活習慣として、マスクを常時着用する機会が多くなりました。
指紋認証は、マスクをしていても関係なくロック解除ができるため、新しい生活習慣に適した生体認証と言えます。2020年秋に発表されたiPad Airの新モデルで指紋認証が搭載されたように、今後は高価なスマホも指紋認証に回帰していく可能性があります。
指紋認証のデメリット:眠っているときは無防備
指紋認証で盲点となりがちなのが、ユーザー本人の意思に関係なく、指さえあれば解除できてしまうという点です。
たとえば眠っているときにスマホを指にあてられれば、それでロックを解除できてしまいます。たとえば、同居している家族がスマホの中身を覗きたがっているといった状況にあるなら、指紋認証を使うのは避けた方がよいでしょう。
顔認証のメリット・デメリット
顔認証のメリット①:ロック解除が手軽
顔認証の一番のメリットは、ロック解除の所作が手軽なことにあります。スマホに意識して顔をかざさなくても、スマホを正面に向けて持てばロックを解除できます。
一般に、顔認証の仕組みでは学習機能を備えていることが多く、眼鏡をかけたり髪型を変えたりしても問題なく認識できます。ただし、マスクをつけたときなど、顔の輪郭を覆ってしまうような変化には対応できません。
顔認証のメリット②:目を開けているときだけ認証できる
多くのスマホの顔認証では、「視線認識」の仕組みが取り入れられています。目を開けてスマホを正面から見ているときだけロックが解除できるというものです。寝顔に向けても反応しないため、安心です。
顔認証のデメリット:精度が高い仕組みは高価なスマホにしかない
顔認証の場合、一般的には、認識精度は高くない仕組みだと考えておいた方が良いでしょう。iPhoneのFace IDのように、特殊な部品を使って精度を確保しているものもありますが、Androidでの採用例は多くはありません。
▲iPhoneのFace IDは顔を立体的に認識するために多くの部品を用いています
インカメラだけで認識する顔認証システムの場合、人の顔を平面的な画像として認識します。そのため、正面から撮られた顔写真と見分けがつかず、紙に印刷した顔写真をかざすだけでロックを解除してしまう場合もあります。
双子のように顔かたちがそっくりな人を誤認識してしまう場合もあります。
指紋・顔以外の生体認証の仕組み
生体認証の仕組みは指紋・顔だけではありません。人によって違う部位を正しく見分けることができる仕組みならば、それは生体認証として機能します。
過去にスマホで採用例があるものでは「虹彩認証」という仕組みがあります。虹彩(こうさい)と呼ばれる、目の周りの模様を見分ける仕組みで、2017年までは富士通のarrowsシリーズが多く採用していたほか、Galaxy S9など一部のGalaxyスマホでも搭載されていました。
また、「静脈認証」という認証の仕組みも存在します。人によって異なる静脈の形を見分ける仕組みで、オフィスの入場システムなどで採用されています。
▲日本未発売のLG G8 ThinQ。「手のひら静脈認証」でロック解除できるスマホです
スマホでの静脈認証の採用例は多くありませんが、LG G8 ThinQは「手のひら静脈認証」によるロック解除機能を備えています。
静脈認証は、近い将来より広く用いられる可能性も。特別な機能を持たないスマホでも、カメラさえあれば使える静脈認証の技術開発が進んでいます。