2020年には、正式に商用サービスとして次世代通信技術「5G(ファイブジー)」対応の通信プランの提供が始まりました。3大キャリアや、楽天モバイル、また、一部の格安SIMでも5G対応プランの提供が目立ちます。
一方で、注意事項を知らずに5G目当てのプラン契約をするのは危険。まずは基本的な知識とリアルな現状を知ることで、要らぬトラブルを未然に防ぎましょう。
※本記事は2020年2月10日現在の情報です。
▲2020年1月にNTTドコモが開催した「DOCOMO Open House 2020」にて。コロナ禍前の展示会ゆえに、注目度は高かった
目次
端末購入時にはエリアに注意
5G通信を利用するには、5G専用のアンテナを備えたスマートフォンを用意して、5G対応の通信プランを契約しなくてはなりません。
しかし、こうした条件を揃えても、すぐに恩恵が受けられるわけではないのです。
実は、5Gに対応しているエリアは、まだまだ限定的。基地局数などの具体的な数字は本稿では割愛しますが、基本的には都心部の主要なランドマーク周辺でしか利用できないと理解しておくとわかりやすいでしょう。
例えば、渋谷駅とか新橋駅とか、人がたくさんいる駅前を歩いているとたまにアンテナ表示が「5G」に変わるくらいの印象です。
少し郊外に出ると、まだほとんど5Gをサポートしているエリアはありません。高い最新端末に買い替えて、「5G」プランにしたからすぐに高速大容量の通信ができるようになるか、というとそうでもないのです。
本記事執筆時点では、生活圏によっては、正直まだ「5Gを使いに行こう」と目的を持って出かけないと、超高速通信のエリアに出会えない可能性すらあります。
もちろん、大手キャリアでは、公式サイトで5G対応エリアを確認できるよう情報公開しているのですが、これもなかなか素人には読み解きづらい。
例えば、5G対応エリアがあるな、と思ってそこに向かったとしても、アンテナ表示だけ5Gになるだけで通信速度は4Gと対して変わらないような場面も多々ありました。
端末が対応する周波数に注意
一般のユーザーとしては、端末選びでも、使用する周波数帯の違いに注意する必要があります。実は同じ5G通信でも、大きく2種類があるのです。
まず、6GHz未満の周波数帯は「サブ6帯」と呼ばれ、5Gで使う周波数のなかでは比較的通信速度が遅めになるけど、汎用性が高いのが特徴。
一方、28GHz〜の周波数帯は「ミリ波」と呼ばれ、高い通信速度が出るけれど、直進性が強くて障害物に弱いという特性があり、使える場面は限られがちです。
実はスマートフォンによって、対応する周波数帯に違いがあります。日本における多くの5G対応端末は、まずは「サブ6」のサポートを重視している印象。サブ6とミリ波の両方に対応する端末はまだまだ少数派です。
例えば、最新のiPhone 12シリーズなどは、日本向けモデルではサブ6のみの対応となっています。
▲iPhone 12は5G対応だが、日本向けモデルはサブ6のみサポートしている
しかしながら、こうした建前とは裏腹に、先述のキャリアが公開しているエリアマップを確認していると、体感的には意外とミリ波対応エリアも多く感じました。
ただでさえ5G対応エリアは限られているのに、サブ6専用端末では、さらに使用チャンスが少なくなるというのは悩ましいところ。
もちろん、Galaxyやarrowsのハイエンドモデルなど、ミリ波もサポートするスマートフォンもあるにはあるのですが、価格はやはり高額になりがち。
コスト面を重視する方針ならば、サブ6対応のみに対応するミドルレンジの端末を選択するか、あるいは、まだしばらくは4G向け端末を使い続けることも現実的でしょう。
5Gの恩恵を受けやすくなるにはもう少しかかりそう
もちろん、5Gを活用することで、有線通信が使えなかった場所などで高速大容量の通信が行えるようになるというメリットは存在します。
例えば、ライブ会場や、スポーツの会場などからの高解像度のライブ映像配信などは行いやすくなるでしょう。まずはこうした商業的なシーンでの利用が目立ち、一般ユーザーへの恩恵は徐々に濃くなっていくのではないかと思います。
少し踏み込むと、本来の意味での5Gと言われる「SA(スタンドアローン)」構成のネットワークも、21年からの始動と言われています。
2020年はローンチの年ということで、まだまだ助走の第一歩だったというわけです。
だれもがまともに5Gの恩恵を受けられるようになるには、早くてもあと2〜3年は待つ必要があるのではないかと予想します。
“いまのところ”は、通信会社の誇大なアピールに振り回されずに、ユーザーもどーんと気長に構えることが大切ではないでしょうか。