従来は主にプリペイドの通信プランで活躍した「eSIM」ですが、楽天モバイルやIIJmioなど、eSIMを採用する通信プランが登場してきました。
また、総務省が携帯料金を下げる一環として「eSIM」対応プランの普及を促したこともあり、ソフトバンクは2021年7月14日から、KDDIは8月26日からeSIMの提供を開始しています。
ここでは「そもそもeSIMとは何なのか?」 「ユーザーにとって、どんなメリット・デメリットがあるのか?」などの疑問が解消できるように、その概要をまとめました。
目次
「eSIM」とは
「eSIM(イーシム)」とは、Embedded SIM(組み込み型のSIM)を意味する言葉です。通常のSIMカードは端末に挿入する必要があるのに対し、eSIMは端末内に組み込まれた部品であるため抜き差しすることはありません。
通信事業者が提供するアプリや、通信事業者のウェブサイトから通信プランを契約することで、その場ですぐに通信プランを使えるようになります。
特に、DSDS(デュアルシムデュアルスタンダード)やDSDV(デュアルシムデュアルボルテ)といった仕様に対応している端末ならば、普段セットしているSIMカード(≒ いつもの通信プラン)のほかに、eSIMでもう一つの通信プランを契約して同時に利用することが可能です。
iPhoneシリーズでは、XS/XS Max/XR以降のモデルが、iPhone SE(第2世代)も含め、eSIMをサポートします。
▲iPhoneでは「設定」>「モバイル通信」>「モバイル通信プランを追加」からeSIM向けのプランを追加できる
Androidでは、Google Pixelシリーズの「Pixel 4」以降が日本版でもeSIMをサポート。
また、OPPOやHUAWEI、AQUOSの一部機種も対応します。なお、楽天モバイルが提供する「Rakuten Mini/Hand/BIG」のように、物理SIMカードが使えず、eSIMのみ対応する端末も、少数ではありますが存在します。
そのほか、タブレットデバイスやノートPCの対応も広がりを見せます。iPadシリーズや、Surfaceシリーズを筆頭に、Acer、ASUS、DELL、HP、Lenovo、SAMSUNGなどの一部製品がeSIMをサポートしています。
eSIMを使う上で気を付けること
eSIMを利用するうえで、まず気をつけておきたいことは、eSIM用の通信プランも「SIMロック」の対象になるということです。
例えば、大手キャリアで購入したiPhoneで、eSIM用の通信プランを利用するには、SIMロックを解除してから行う必要があります。
▲au「SIMロック解除のお手続き」(https://www.au.com/support/service/mobile/procedure/simcard/unlock/)
SIMロック解除の手続きは、一定条件を満たした端末に限り、各事業者の専用WEBページから申し込めます。
特に割賦払いを選択した場合は、期間経過に伴って申し込めるようになりますので、購入後すぐにeSIMを使いたい場合には、一括払いで端末を購入しておく必要があります。
国内でeSIMプランを使う
eSIM向け通信プランにも、データ通信専用、音声通話対応のものが存在します。また、使用する回線は、事業者や提供プランごとに異なります。
例えば、IIJmioが提供する「データプラン ゼロ」は、データ通信専用のeSIM向けプランで、NTTドコモ回線を利用します。タブレットやPCなど、音声通話が必要ないデバイスでの運用に適しています。
なお、こうしたプランをスマートフォンで利用する場合には、音声通話が利用できる主回線が別途維持した状態が望ましいです。
具体的には、大手キャリアの段階性定額プランをメインで利用しつつ、通信量が必要になったらeSIM向けプランで安く追加の通信量をチャージする、といった運用が想定されます。
▲IIJmio データプラン ゼロ(https://www.iijmio.jp/esim/)
一方、eSIM向けプランだけでスマホを運用したい場合には、音声通話に対応したものを選ぶ方が合理的です。例えば、楽天モバイルが提供しているeSIM向けプランは音声通話に対応しています。
また、auの「povo」やソフトバンクの「SoftBank on LINE」など、21年3月から提供開始となったMNO(大手キャリア)のオンライン専用プランで展開されるeSIM対応プランもこちらのタイプです。
▲楽天モバイル eSIMについて(https://network.mobile.rakuten.co.jp/product/sim/esim/)
eSIMプランのメリットは?
こうしたeSIMプランのメリットは、ユーザーが望むタイミングと場所で、契約と設定を自分自身で行えることです。
オンライン手続きで本人認証が完結する「eKYC」という仕組みも登場しており、店舗に行かずとも、オンラインサイトから手順を追って操作すれば、自宅で契約を済ませられます。
関連して、「povo」や「SoftBank on LINE」のように、店頭でのサポートを省いたことで、安価な月額料金を実現している通信プランがあることも魅力です。
eSIMプランのデメリットは?
一方、デメリットとしては、まずオンライン申し込みの手順を理解できる程度のITリテラシーが求められるという点が挙げられます。
スマホやPCの操作が良く分からない人にとっては、敷居が高く感じられるでしょう。ある程度、下調べを済ませ、仕組みを理解できてから申し込むのが賢明です。
また、eSIM向け通信プランは、利用する端末を頻繁に変える人にとっても注意が必要です。物理的なSIMカードならば、セットする端末を変えて、APNを設定すれば切り替えが可能でしたが、eSIMでは端末の切り替えを容易に行いづらくなります。
海外でeSIMプラン使う
新型コロナウイルスの影響で使用機会は減っていますが、海外渡航時に現地のプリペイドの通信プランを購入するうえでも、eSIM対応は便利な仕様です。
そもそも、従来は、スマホで現地の通信プランを利用するためには、現地の空港や海外の街中で販売されているSIMカードを購入し、端末にセットして設定も行うのが基本でした。
現地の空港に到着してすぐにモバイル通信を行いたい場合には、日本の空港内でプリペイドSIMをあらかじめ購入したり、ECサイトで海外用のプリペイドSIMカードを購入し、手元に取り寄せておくような対策が必要だったのです。
が、空港で取扱いのあるプリペイドSIMは対象国が限られていたり、ECサイトでの購入は取り寄せに時間がかかるなどの注意点もありました。
しかし、eSIM対応のスマホとeSIM向けの通信プランが普及したことで、こうした対策のハードルがぐっと下がりました。
eSIM向けプランは、Webサイトやアプリなどから時間や場所を問わずに購入可能なので、端末での設定さえスムーズに行えれば、海外での通信手段を容易に確保できるわけです。
海外向けeSIMプランの例
ここでは、海外旅行などで使えるeSIMプランの例として、筆者が試したことがあるサービスを3つ紹介します。
GigSky(ギグスカイ)
一つ目は「GigSky(ギグスカイ)」。グローバルでの提供されているサービスで、世界各国でデータ通信プランを利用できます。専用アプリから通信プランを購入して利用します。価格はやや高めですが、アプリの表記も日本語でわかりやすく使いやすいので、入門向けと言えるでしょう。
Ubigi(ユビジ)
二つ目は「Ubigi(ユビジ)」。フランスの老舗MVNO「Transatel(トランサテル)」が提供する通信サービスで、欧米をはじめ、アジアや日本でプリペイドのデータ通信プランを利用できます。
ウェブサイトで会員登録をしてから、設定アプリで登録を行い、専用アプリで通信プランを購入するというやや複雑な利用手順を踏むので、別途解説記事などを読みつつ利用することをオススメします。
アプリ自体は日本語に対応しています。
T-Mobile(ティーモバイル)
三つ目は「T-Mobile(ティーモバイル)」のeSIMプランです。
アメリカの大手通信事業者であり、専用アプリから通信プランを契約して利用でき、音声通話も利用できるため、データ通信専用のプリペイドプランと比べるとやや割高です。アプリは英語表記になります。