ChatGPTをはじめとする生成AIの進化により、AIが再注目を集めている現在。
振り返ってみれば、過去にも「人工知能(AI)ブーム」と呼ばれた時代は何度かありました。しかし昨今の流行は、私たちの生活の身近なところまで波及しており、その存在感は日に日に高まっている印象すらあります。
現在、ニュースや街中でよく見聞きする「AI」といえば「生成AI」を指すことが多いですが、今回取り上げるのは、ソフトウェアではなくハードウェア。 今まさに広がりつつある「AI PC」について紹介します。
目次
AI PCとは?
AI PCとは、従来のCPUやGPUに加えて、「NPU」と呼ばれるAI処理に特化したプロセッサーを搭載したパソコンのこと。 CPUやGPUは聞き覚えのある人も多いかと思いますが、「NPU」と聞いてもすぐにはピンとこないかもしれません。
NPUは、Neural network Processing Unitの略。「ニューラルネットワーク」と言われると、この単語自体は聞いたことのある人もいるのではないでしょうか。人間の脳の神経細胞(ニューロン)の働きを模倣した機械学習モデルで、AIを支える技術のひとつでもあります。
CPUやGPUと同じように、NPUもパソコン本体のデータ処理を行うプロセッサーの一種ですが、特にAIの推論処理を高速化するために設計されています。このNPUを搭載したパソコンのことをAI PCと呼び、2024年に入ってから製品が店頭に並ぶようになりました。
AI PCの特徴とメリット
最近はゲーミングPCをはじめとするハイスペックPCも広く普及しているため、「AIを高速処理できるPCが出た」と言われても、いまいち魅力的に感じられないかもしれません。
AI PCの具体的な特徴とは、そしてAI PCを選ぶメリットとは、どのような点にあるのでしょうか。整理しながら見ていきましょう。
1. AI処理の高速化
まずは何といっても、NPUを搭載することによって実現した、AI処理の高速化です。
これまで、ローカル環境でAIを動かすには純粋なマシンパワーが不可欠で、CPUやGPUをフル稼働させなければなりませんでした。AI PCならその処理を丸ごとNPUが引き受けてくれるため、CPUやGPUの負荷を減らしつつ、効率的に推論処理を行うことができます。
ちなみに、これはAI PCに限った話ではありませんが、ローカル環境で動作するため、プライバシーやセキュリティの懸念を軽減できるのもポイント。それまではクラウド上でAI処理をしていた人にとっては、メリットだといえるでしょう。
2. 低消費電力
NPUが引き受けてくれるのは、CPUやGPUの負荷だけではありません。AI処理に特化しているため消費電力も抑えることができ、本体のバッテリー駆動時間も長くなる傾向があります。
AIの普及に際してたびたび話題にあがる懸念事項のひとつに、電力消費の問題があります。特に、生成AIの話題と紐づけた電力需要の報道は2024年以降増えており、「エネルギーをいかにして確保するか」に加えて、「環境負荷にどう対応するのか」といった議論も聞かれるようになりました。
そこで、省電力に一役買ってくれるのが、NPUを搭載したAI PCというわけですね。もちろん、根本的な問題の解決にはなりませんが、従来のPCと比べて消費電力が少ないことは大きなメリットです。
3. クリエイティブな作業など、幅広い活用方法
AI PCの活用方法はさまざま。画像認識、画像生成、機械翻訳、音声認識、自然言語処理、データ分析といった、AIが得意とする分野の作業を効率化してくれるのはもちろん、その活用方法は今後ますます広がっていくと考えられます。
たとえば、画像だけでなく、音楽や動画といったクリエイティブな作業でもAIが使えるシーンが増えるかもしれませんし、素人でもAIを使ってゲーム開発やプログラミングができるようになるかもしれません。AIが普及すればするほど、AI PCが活躍する場面も増えるはずです。
よくある質問
ここでは、AI PCに関するよくある質問とその回答をいくつかご紹介します。
まだまだ身近とはいえないAI PCについて、理解を進める一端になるでしょう。
Q. AI PCは、それ以外のパソコンと何が違うの?
従来のCPUやGPUに加えて、AI処理に特化した「NPU」と呼ばれるプロセッサーを搭載しているのが、AI PCです。
IntelとMicrosoftが策定した定義では、「① Copilotに対応していること」「② Copilotキーを搭載すること」「③ CPUとGPUに加えてNPUを搭載すること」の3点を満たしていることが、AI PCの要件とされています。
Q. 「NPU」って何?
Neural network Processing Unitの略で、AI処理に特化したプロセッサーのこと。 AI処理に特化していることで、電力の効率化、引いては低電力化や、高速化といった性能のアップが嘱望されています。
これから普及していくだろうAI PCに注目!
「AI PC」と呼ばれるモデルが登場したのは、2024年に入ってから。まだまだ新しいタイプの、普及途上にあるPCなので、今すぐ慌てて買う必要はないかもしれません。
とはいえ、すでに各社から続々と最新モデルが登場していますし、日常的にAIを活用している人にとっては、普段遣いのPCとしても十分に選択肢に入ってきます。今のうちに導入しておけば、作業の効率化に繋がるだけでなく、AI活用の幅も広げられるはずです。
本記事で取り上げたのはあくまでもAI PCの基本に過ぎませんので、実際に各社が販売しているモデルを見れば、また印象が変わるかもしれません。少し検索するだけでもさまざまなAI PCがヒットするので、ご興味のある方はぜひ調べてみてください。