スマホで“もっともよく使う機能”のひとつ、カメラ。2020年現在では、低価格の製品であっても、カメラが2~3個並ぶ多眼カメラを搭載した機種が増えています。
多眼カメラを「それぞれ機能が異なる」「使い方の幅が拡がる」となんとなく理解する一方で、実のところは利用シーンがイメージしにくい(できない)……なんて人も多いのではないでしょうか。
そこでスマホの多眼カメラの機能のおさらいしつつ、それぞれのカメラで活用例を紹介します。
防水やおサイフケータイなど、他の機能だけでは機種選びの決め手に欠ける。そんな場合などにはぜひ“カメラの使い道”も判断要素に入れてみましょう。
目次
はじめに:カメラの種類
スマホに搭載された多眼カメラの多くは、1つが標準カメラ、2つ目以降は機能の異なる“補助カメラ”で構成されています。
そして2020年現在、“補助カメラ”として搭載されるカメラには次のような機能が備わっています。
- 超広角カメラ(ウルトラワイドアングルカメラ)
→標準カメラより広い範囲を1回のシャッター操作で撮影できる
- 望遠カメラ(ズームカメラ)
→標準カメラよりも被写体を大きく(引き寄せて)撮影できる
- マクロカメラ(接写カメラ/近接カメラ)
→標準カメラよりも被写体を大きく(近づいて)撮影できる
- 深度カメラ(デプスカメラ)
→標準カメラと組み合わせて被写体の背景にボケみをつくったり、ボケ具合を調整したりできる
たとえばこんな活用方法
「日常生活で離れた被写体をズーム撮影する機会が多い」など、用途がはっきりイメージできている場合には、前述の機能などを参考にスマホ(カメラ)を選べばOKです。
しかし具体的な活用シーンが思い浮かばない、あるいはまだイマイチ機能がイメージできない。そんなあなたに、ここからは各カメラの活用方法(例)を紹介します。
超広角カメラ:ブログ用など記録写真の撮影に便利
超広角カメラはより広い範囲を1回の操作で撮影できるカメラです。
次の2枚の写真は同じ位置から標準カメラ(1枚目)と超広角カメラ(2枚目)で撮影したもの。2枚を比べることで、写真のできあがりに違いがあるとわかります。
風景をより広大に見せたり、記念写真に背景を大きく写しこんだり。こうした用途に向くのが超広角カメラです。
このほか、活用方法としてオススメなのがブログなどに使用する記録写真の撮影です。
下の2枚はエレベーターの内側から扉を撮影したもの。
標準カメラ(1枚目)では見切れた扉しか写すことができませんでしたが、超広角カメラ(2枚目)には左右のボタンや扉上の階数表示まで写せています。
例えば旅先で訪れた施設やホテルを紹介する場合。部屋の間取りなど、物理的な都合により、撮りたいものが枠内におさまりきらないことがあります。あと2~3歩うしろに下がることさえができれば……といったケースを想像してみてください。
そんなときに活躍するのが超広角カメラです。カメラを切り替えるだけで、あたかも2~3歩ひいた位置から撮ったような写真が残せます。
望遠カメラ:望遠鏡代わりにもなる
望遠カメラは被写体を引き寄せて大きく撮影できるカメラです。望遠カメラがなくとも、大抵のスマホにはデジタルズーム機能がついているので、もっともイメージしやすい機能でしょう。
「〇倍の光学ズーム相当」といったように説明される望遠カメラなら(デジタルズーム機能に比べて)写真の表面にざらざらとしたノイズが少ない、きれいな写真が撮影できます。遠くのものをきれいな状態で撮影できることが望遠カメラのメリットです。
この望遠カメラ(および望遠機能)は“望遠鏡代わり”としても使えます。
下の写真は駅のホームで撮影したもの。中央に写る電子案内板には電車の発車時刻や行き先が表示されていますが、この距離だと文字が確認できません。
そこでカメラを起動。撮影画面でズーム倍率をあげていくことで、撮影画面(プレビュー画面)がそのまま望遠鏡代わりになります。
次の4枚の写真は順に「1倍ズーム」「2倍ズーム」「5倍ズーム」「10倍ズーム」の撮影画面です。
このとき試したスマホではデジタルズームの限界が10倍でした。そのため10倍の撮影画面は絵がかなりぼやけています。とはいえ、文字を確認するだけなら十分なレベルであることがわかります。
デジタルズームだけでも撮影画面を望遠鏡代わりにできますが、望遠カメラがついている機種ほど(一般的に)ズームの最大倍率は高く設計されています。
遠くの表示を「なんて書いてあるのかな?」と眺める機会が多い場合には、望遠カメラ付きのスマホがあると便利です。
マクロカメラ:“別世界”を楽しむ顕微鏡や虫眼鏡代わりに使う
マクロカメラは被写体に近づいて大きく撮影できるカメラです。
被写体を大きく撮影できる点は望遠カメラと同じですが、望遠カメラが被写体を「引き寄せて撮る」のに対して、マクロカメラは被写体に「近づいて撮れる」点が異なります。
これだけだと、「引き寄せる」と「近づく」の違いとは?となっているかもしれませんね。たとえば次の写真を見てみてください。鮮やかな緑色に生い茂った葉っぱに見えます。
しかし実はこれ、塀に生えたコケをマクロカメラで撮影したもの。上の写真ですぐ「コケだ」と気づいた方はどのくらいいるでしょうか。
撮影者側から被写体に近づき、わずか数センチメートルの至近距離から被写体を大きく撮影できるのがマクロカメラです。望遠カメラと比べた場合、被写体の細部をより大きく、よりくっきりと記録できます。
マクロカメラの魅力は、日常の視点とは異なる“別世界”が覗けること。超広角(ズームアウト)や望遠(ズームイン)とはまた違った印象の写真が楽しめます。
さらに実用方法として、虫眼鏡や顕微鏡のように使うことも可能です。拡大率こそ劣りますが、拡大して見た状態を写真として残せることはカメラならでは。
自分で“別世界”を楽しむだけでなく、子どもと一緒にあれこれ覗いてみる、なんて使い方も楽しいのではないでしょうか。
深度カメラ:一眼レフカメラで撮ったような雰囲気を楽しむ
深度カメラは被写体の背景をぼかしたり、ボケ具合を調整したり、といったことを可能にするカメラです。基本的には単体ではなく、標準カメラなど他のカメラとのコンビネーションで機能します。
「一眼レフカメラで撮影したような背景ボケが楽しめる」といった説明がある場合、その多くは深度カメラ(あるいは深度センサー)で疑似的に背景ボケがつくり出されています。
下の2枚は深度カメラを使い、ボケの設定を変えて撮影した写真。ボケを抑えて撮ったもの(1枚目)と最大までボカして撮ったもの(2枚目)ですが、背景の写り方が異なること、それにより被写体の存在感も変わっていることがわかります。
深度カメラで撮る写真はボケをデジタル的に“つくっている”ため、光学的に“できあがる”デジタル一眼レフカメラでのボケと比べると仕上がりが不自然になることも。とはいえ、最近ではAI技術の活用が進み、精度は向上しています。
デジタル一眼レフカメラで撮ったような雰囲気を手軽に楽しみたい。そんな場合には、深度カメラ(あるいは深度センサー)の付いたスマホを選ぶとよいでしょう。
逆にいえば、背景ボケに強くこだわらない場合には、別の機能を含む多眼カメラのスマホを選ぶことで活用シーンの幅が広がります。
まとめ
あたらめて各カメラの特徴と活用例をまとめておきます。
- 超広角カメラ(ウルトラワイドアングルカメラ)
→標準カメラより広い範囲を1回のシャッター操作で撮影できる
→ブログ用など記録写真の撮影に便利
- 望遠カメラ(ズームカメラ)
→標準カメラよりも被写体を大きく(引き寄せて)撮影できる
→撮影画面がそのまま“望遠鏡代わり”になる
- マクロカメラ(接写カメラ/近接カメラ)
→標準カメラよりも被写体を大きく(近づいて)撮影できる
→“別世界”を覗いて楽しめるほか、顕微鏡や虫眼鏡のようにも使える
- 深度カメラ(デプスカメラ)
→標準カメラと組み合わせて被写体の背景にボケみをつくったり、ボケ具合を調整したりできる
→デジタル一眼レフカメラで撮ったような雰囲気が楽しめる
スマホの機種選びにおいて、優先する機能で絞っても候補が複数残った。そんな場合には“カメラの使い道”という視点での機種選びもぜひ意識してみてください。