「セキュリティを確保するためにVPNの使用を推奨する」ということを耳にしたことはありませんか。聞いたことはあっても、VPNとはいったい何なのか、使用するとどうなるのかよくわからない人も多いかもしれません。メリットが多いようであれば、導入してみたいと考えている人もいるでしょう。本記事ではVPNについて解説していきます。
目次
VPNとは何のためのもの?
VPNはVirtual Private Networkの頭文字を取って略したもので、仮想専用回線のことを指します。
インターネットを使う上でセキュリティを確保するためには専用回線を使用するのが理想的ですが、多額のコストがかかるため、多くの場合現実的ではありません。VPNは専用回線を引くほどのコストはかけずに、専用回線に近いセキュリティを確保するための技術・サービスです。
VPNの仕組み
VPNはトンネリングや暗号化、カプセル化といったセキュリティ技術によって実現されています。
トンネリングというのは、通信先との間に仮想的なトンネルを作ることです。トンネルの中には第三者が侵入することはできません。
また、カプセル化というのは、データを分割し暗号化して包み込むことです。通信先に到達するとカプセル化が解除されますが、それまでは中のデータを見ることはできません。
VPNを利用しているときには、カプセル化されたデータがトンネルの中を通過して通信先に届きます。トンネル内に第三者が侵入することはできず、仮にできたとしてもデータの内容を見ることはできないため、セキュリティが非常に強固です。
また、VPNサーバーを経由して通信する仕組みのため、IPアドレスも秘匿されます。
VPNの種類
VPNは主に次の2種類に大別できます。では、それぞれのVPNの特徴を見ていきましょう。
インターネットVPN
インターネットVPNは、通常のインターネット上で利用できるVPNのことです。サービスの提供会社が専用のアプリを用意しており、ログインするだけで手軽に利用できます。ただし、回線が混雑しているときには速度が低下するなどの影響を受けることが多いです。
主に個人での利用を想定して提供されています。サブスクリプション形式のサービスが多く、1ヶ月あたりの料金は数百円から千円程度です。
IP-VPN
IP-VPNはクローズドネットワークを使用するVPNのことです。クローズドネットワークというのは閉域網とも呼ばれており、特定の利用者のみがアクセスできるネットワークを指します。回線は通常のインターネット回線と同じですが、混雑しているときでも影響を受けることはありません。セキュリティが高く安定しているのが特徴です。
主に企業向けのサービスとして提供されています。
VPN導入に必要なもの
VPNを導入する際に必要なものは、前述したインターネットVPNとIP-VPNで異なります。
インターネットVPNの場合には、専用のアプリとアカウントがあれば利用可能です。ルーターは一般に市販されているもので問題ありません。
IP-VPNの場合には、VPNゲートウェイとVPNルーターも必要になります。VPNゲートウェイというのは、カプセル化や暗号化などを行う機器のことです。VPNルーターというのは、VPN機能が備わっているルーターのことです。専用のソフトウェアをインストールすることでVPNゲートウェイの機能を兼ねることもできます。
個人でVPNを利用するメリット
VPNは企業で利用されることが多いですが、個人で利用している人もいます。では、VPNを個人で利用するメリットについて見ていきましょう。
フリーWi-Fiでも安全に利用できる
街中ではフリーWi-Fiを利用できる場所も多いですが、フリーWi-Fiの利用はセキュリティリスクを伴うのが難点です。通信内容が暗号化されていない場合が多く、偽物のWi-Fiにアクセスしてしまうこともあります。
VPNを利用すれば、フリーWi-Fiでも安全に利用できるのがメリットです。トンネリングやカプセル化、暗号化などにより、通信内容を盗み見られてしまうことはありません。
海外に行くときに便利
日本のネットサービスの中には、海外から利用できないものもあります。そのため、現地から日本のネットサービスを利用したい場合に不便に感じる人もいるでしょう。
一方で、VPNサービスの多くは接続先のサーバーを選択可能です。海外にいてもVPNで日本のサーバーを選択することで、国内からアクセスしているのと同じように認識されるため、ネットサービスを利用できます。
プライバシーやセキュリティを高められる
VPNを利用するとトンネリングやカプセル化、暗号化などにより、通常の環境よりもセキュリティを大幅に強化できます。プライバシーやセキュリティを特に強化したい場合などにおすすめです。
VPNを利用する上での注意点
VPNを利用するのは、必ずしも良いことばかりではありません。次のような点に注意する必要があります。
速度が遅くなる可能性
VPNに接続しているときの通信は、VPNなしのときよりも速度が遅くなることがあります。カプセル化やトンネリング、暗号化などを行う際に、多少なりともロスが生じるのが原因です。また、接続するサーバーが地理的に遠い場合にはさらに速度が落ちます。通信速度が求められる用途にはあまり向かない点に留意しておきましょう。
無料VPNは危険な可能性
VPNの中には無料で利用できるものもあります。しかし、無料VPNの利用はあまりおすすめできません。無料VPNには、個人情報を抜き取られるなどのリスクがあるためです。セキュリティを高めるどころか逆にリスクを増やしてしまう結果になってしまいます。
また、有料で提供されているVPNの中には、無料プランが設けられているものもありますが、その場合は無料プランのトライアル版として提供されているため、危険は少ないでしょう。あくまでトライアル版なので、機能や通信容量は大幅に制限されています。
よくある質問
VPNに関するよくある質問とその回答を見ていきましょう。
自宅のWi-FiでVPNは不要?
必ずしも必要とはいえませんが、不要ともいえません。自宅のWi-Fiはセキュリティが高めですが、データを盗み見られるリスクはゼロとは限りません。ルーターの電波は家の外まで届いているため、不正にアクセスされてしまうこともあります。もし、不正にアクセスされてしまっている場合でも、VPNを使用していればリスクを回避できます。
VPNがあればセキュリティソフトは不要?
「セキュリティを高める」ことを目的としていることは同じでも、VPNとセキュリティソフトでは役割が異なります。VPNは通信経路での情報漏洩を防止したりIPアドレスを秘匿したりできますが、マルウェアを検知したり駆除したりする機能は備わっていません。VPNを使用していても、セキュリティソフトは別途必要です。
VPNとWi-Fiの違いは?
Wi-Fiはルーターとデバイスを接続する無線通信のことで、通信は暗号化されています。しかし、VPNと違ってカプセル化やトンネリングなどは行われておらず、IPアドレスも秘匿できません。
まとめ
VPNは、通信を暗号化しトンネリングやカプセル化を行ってセキュリティを高める技術です。インターネットVPNとIP-VPNに大別できますが、個人向けとしてはインターネットVPNのサービスが提供されています。フリーWi-Fiを利用するときやセキュリティを高めたいときなどに便利です。サーバーのIPアドレスで通信できるため、海外からでも国内向けのネットサービスを利用できます。
ただし、VPNを使用すると速度がやや落ちてしまいます。用途に応じてVPNの有無を使い分けて便利に利用しましょう。