スマートフォンといえば、かつて「自分が利用しているキャリア以外のSIMカードは使えない」という時期がありました。キャリアを変更する際には端末も買い換える必要があり、気軽には乗り換えられない。いわゆる「SIMロック」ですね。キャリアに「SIMロック解除」を依頼したことがある人も多いでしょう。
しかしそんなSIMロックが今年、ついに「原則禁止」となります。
テレビでも取り上げられるなど大きなニュースとなっている、SIMロックの原則禁止。「これからはキャリアを気にせず端末を買い換えられるってこと?」といったイメージを持っている方もいると思いますが、具体的にはどうなるのでしょうか。
本記事では「SIMロックの原則禁止」とはどういうことか、基本的なところから確認していきます。
目次
「SIMロック」とは?
スマートフォンで通信をするために必要な「SIMカード」ですが、このカードにはそれぞれID番号が割り振られています。携帯電話会社はこのSIMカードのIDで契約者を認識して、通信サービスを提供しているわけです。
SIMカードを使うのは、どの国のスマートフォンも同様。しかし日本には「SIMロック」という独自の仕組みがありました。これは「国内の携帯電話会社で端末を購入した場合、契約しているキャリア以外のSIMカードは使えない」というものです。
例として、SIMロックがかかっていた2010年代前半のiPhoneを例に考えてみましょう。
当時、iPhone自体は各携帯ショップで販売されていましたが、たとえば「ソフトバンクで買ったiPhoneに、auのSIMカードを挿入して使う」ことはできませんでした。同じiPhoneでも、別のキャリアのSIMカードを使うことはできなかったのです。
一方、Appleストアで販売しているiPhoneにはSIMロックがかかっていなかったため、どのキャリアのSIMカードを挿入しても使うことができました。これが、いわゆる「SIMフリー端末」と呼ばれるものですね。
やがて、2015年に総務省がSIMロックを解除できるように義務化。以降はSIMフリー端末が増え、SIMロックがかかっている端末もロックを解除できるようになりました。
「SIMロックの原則禁止」によって、どうなるの?
そして、2021年10月からはSIMロックが「原則禁止」となります。
これによって「例外を除いてSIMロックをかけてはいけない」ことになるため、購入したスマートフォン端末のSIMロックを解除する必要がなくなるわけです。
では、この「SIMロックの原則禁止」によって、ユーザーである私たちにはどのような影響があるのでしょうか。注意点とあわせて、主なポイントを確認していきましょう。
① 端末はそのままで別のキャリアに乗り換えやすくなる
先ほどのiPhoneの例で言えば、「ソフトバンクで購入したiPhoneを、auに乗り換えてもそのまま使える」ようなイメージですね。別のキャリアのSIMカードを使えるのはもちろん、乗り換える際にSIMロックを解除する必要もありません。
特に最近は大手キャリアが次々に新プランを打ち出しており、乗り換えを考えている人も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。「気軽にいろいろなキャリアや回線を試せる」のは、ユーザーにとって嬉しいポイントだと言えるでしょう。
② 2021年9月以前に発売された端末は対象外
この「SIMロックの原則禁止」のルールが適用されるのは2021年10月1日からですので、それ以前に発売されたスマートフォン端末は対象外となります。
それまでの端末にはこれまでどおりSIMロックがかかっている場合があるため、注意が必要です。
しかしその一方で、そもそも端末にSIMロックをかけていないMVNO(格安SIM事業者)などもあり、大手キャリアでも、ルール変更に先立ってSIMロックを原則解除している場合もあるそうです。
端末を購入する際は、あらかじめ店員さんに確認してみるといいでしょう。
③ キャリアと端末の「対応周波数帯」は要チェック!
それが、端末が対応している「周波数帯(バンド)」。CMなどで「プラチナバンド」という言葉を見聞きしたことがある人も多いのではないのでしょうか。
携帯会社にはそれぞれ異なるバンドが割り当てられており、各社が販売している端末は自社のバンドに対応するように作られています。
そのため、異なるキャリアのSIMカードを挿入したときに、「端末側がそのバンドに対応していない」という現象が起こり得るのです。
異なるバンドでも通信はできますが、「通信速度が遅くなる」「地域によっては接続できない」といった問題が発生する可能性も。ですので、別のキャリアのSIMカードを挿入する際には、キャリアのバンドと端末が対応しているバンドをあらかじめチェックしておきましょう。
④ 「原則禁止」なので、例外はある
「原則禁止」という説明からも想像できるように、このルールには例外があります。
例外とする場合の規定はガイドラインに記載がありますが、たとえば端末を分割払いで販売するにあたって、代金が支払われない可能性がある場合などに適用されるようです。
また、それ以外の「例外」でSIMロック端末を販売する場合は、その旨を製品や広告に記載することが定められています。ユーザー側はあまり意識する必要はないかもしれませんが、詳しく知りたい方は総務省のガイドラインを参照ください。
ユーザーにとってはメリットだらけ
以上、2021年10月に始まった「SIMロックの原則禁止」について、その概要と注意点を説明しました。
ユーザーにとっては「SIMロック解除の手間が省ける」「別のキャリアに乗り換えやすくなる」などのメリットが多いルール変更であり、普段遣いするにあたってはデメリットらしいデメリットはありません。
ただし、対応周波数帯の違いや、乗り換えの際の設定など、注意点も少なからずありますので、乗り換える際には事前にチェックすることをおすすめします。